論文を書くときに、ネタよりも
論文の自体への理解がまず大切になります。
論文の書き方の本はたくさんでていますが、
そのうち、5冊紹介いたします。
論文の教室
名古屋大学大学位の戸田山教授の本です。
専攻は科学哲学。
「哲学」とつくと、色々とお門違いに
感じる方もいるかもしれませんが、
科学哲学分野は、科学的発展の法則や
創造性の研究などもする分野です。
どういったことが真にたどり着くかという
探求の中で、論文の構成や考え方についても
近しい考え方があります。
親しみやすい内容として、ヘタ夫くんを
登場させて、悪い論文の例を直すことで
全体を示してくれています。
全体を通して参考になりますが、
その一部を紹介すれば、
P42【鉄則5】論文にはつぎの三つの柱がある。
(1) 与えられた問い、あるいは自分で立てた問いに対して、
(2) 一つの明確な答えを主張し、
(3) その主張を論理的に裏付けるための事実的・理論的な根拠を提示して主張する。
P42【鉄則6】「曖昧さ」と「はぐらかし」は厳禁。
P43【鉄則7】「問い+答え+論拠」以外のことを書いてはいけない
P44【鉄則10】論文は第三者にチェック可能なものでなければならない。
この辺りを理解するだけでも、
書き方が変わってくるでしょう。
レポートの組み立て方
学習院大学名誉教授の木下教授の書籍です。
レポートの書き方ですが、修士論文を書く上でも
参考になる部分が多いです。
事実と意見の区別という点を述べてくれています。
文章はわかりやすく、構造化することは他の書籍でも
言われるところです。
そのために、「叙述の順序」を工夫することを
書いてくれています。
重点先行で書くことの大切さを説いています。
情報化社会は以前からの話。
論文を読むときに、一から十まで読まれることはまれです。
「はじめに」をちょちょっと読んで、読み捨てられる
論文が多いのは、探している立場でもわかるでしょう。
だから、考えた順番で伝えるのではなく、
理解しやすいことから、大切なことから伝えていく必要があります。
社会人からM1になったばかりであれば、
一度レポートについて整理をしておくために
いい本です。
学術論文の技法
学習院大学の斎藤孝名誉教授の書籍です。
調べたことを書かないこと、捨てることの大切さについて
述べている部分をここでは紹介しておきます。
P29
せいぜい五十枚程度でまとまるような論述を何百枚も費やして書く……。それを書いた本人は力作だと思いこんでいるかも知れませんが、多くの場合、論点が多岐にわたって、一体、何を主張したいのかわからないダラダラしたものになっています。(略)
(その理由は)自分が調べたこと、知ったことのすべてを一つの論文に盛り込もうとするからです。
調べた知識が100あれば、結果書くのは40程度にした方が、
全体のわかりやすさが出てきます。
全部書きたいという気持ちが湧くのは当然ですが、
そこをぐっとこらえて捨てることで、
論文がぐっと見やすくなります。
文化系必修研究生活術
京都大学の東郷雄二名誉教授の本です。
ここでは、研究テーマの選び方について
述べている部分をご紹介します。
テーマの選び方として、以下の3つを例示しています。
(1) 運命的出会い
(2) 先生からテーマをもらう
(3) 読んだ論文や聞いた発表で興味を持つ
といっても待っているだけではなかなか成功しないため、
こちらの4つについても付け加えてくれています。
(1) 専門学術誌を見る
(2) 学会や研究会の発表テーマを参考にする
(3) 常にアンテナを張る
(4) 疑問を持つ
テーマを選ぶときに、レベルが合っているかは
大切な部分です。
確かに面白そうな問いではあっても、
修士論文なら1年程度で調べきれるものかは
しっかりと確認しましょう。
壮大すぎれば、場合分けをして
その問いの面白そうな一部分だけでも
証明できれば、かなり濃い内容にできます。
先行研究がないと、一から調べることになります。
あった方がいいです。
博士論文を視野に入れているのであれば、
その問いに続きがあり発展できるかも
確認しておきます。
また、トレンドに乗っているかも大切なところです。
証明できたとしても、多くの人にとって興味がなければ、
価値を認めてもらいにくいです。
(さりとて、研究なので、多くの人よりも一部の人に
深く刺さるというテーマでも個人的にはいい気がしますが)
創造的論文の書き方
一橋大学の伊丹敬之名誉教授の本です。
今回紹介してみる部分は、
「書くことが論理を刺激する」です。
頭の中でぐるぐると回っていても、
なかなか良い論文に仕上がりません。
できる部分からでも少しずつ書いてみて、
書いた内容についてその論理性や
前後のつながりを確認する。
そうすることで、全体が少しずつ良くなってきます。
テーマ選定である程度の分量を読み込んだら、
何かしら書いてみて、うまく筆が進むかを確認しましょう。
単に考えるだけではうまくいきません。
考えることは思考を整理することで、
書くことが考えることを刺激できます。
まとめとして
論文やレポートの書き方で参考になりそうな
本をまとめてみました。
重複する記述もありますし、
ご紹介していない部分でも面白い内容もあります。
指導教員は、専門的な内容について
指摘する一方で、基本的な論文の書き方についても
多くの修正をしてくるでしょう。
後者については、今回ご紹介した書籍を読むと
回避できる点も多いです。
興味がある方は、何か一冊から手にしてみてください。