説明がわかりやすいこと大切としても
複雑なものを単純化すると事実とかけはなれることがあります。
わかりやすさをどこまで求めるべきかを考えてみます。
コンテナ船の運賃高騰のニュース
コンテナ船の運賃が高騰しているニュースがあります。
下記に引用をしておきますが、
大枠の説明としては、コロナウィルスによって
巣ごもり消費が起こり、貨物の輸送量が増えて
価格高騰につながったという説明です。
「巣ごもり消費者」は貿易など関係なく、
生活している人にわかりやすい説明です。
価格が上がっていることがニュースであれば、
その理由は大切でないという考え方かもしれません。
コロナ影響 世界の物流担うコンテナ船運賃高騰 物価上昇も懸念
2021年1月27日 5時52分世界の物流を支えるコンテナ船の運賃高騰が続いています。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、コンテナ不足が起きているためで、専門家は長期化した場合モノの価格の上昇につながるおそれもあると指摘しています。
(中略)
背景には新型コロナウイルスの感染拡大で、去年の春ごろには大幅に減っていた輸送量が、アメリカでの巣ごもり需要の増加などで、一転して急増したことがあります。
さらに、アメリカ西海岸などの港で作業員やドライバーが足りずに荷さばきに時間がかかり、世界的にコンテナ不足が起きていることも影響しているということです。
実際の理由:減便と滞留、コンテナ不足
実際にコンテナ運賃の価格が高騰しているのは、
コンテナが不足しているからです。
それは、上記の説明と同じです。
違いは理由です。
新型コロナウィルスの影響で貨物が減ると予測され、
もともと貨物を運ぶスペースを船会社が減らしていました。
そして、アメリカに到着したコンテナを取扱う人が
新型コロナウィルスに罹患したことによって、
その取り扱いが滞留していてコンテナがとまっています。
コンテナは、往復で使います。
アジアからアメリカに行き、アメリカに行ったコンテナは
またアジアに戻ります。
アメリカでコンテナが止まると、
アジアに戻ってきません。
ダブルパンチ(コンテナ船を減らし、滞留でアジアに戻らない)
という理由で、輸送用のコンテナが足りなくなるのです。
こういった理由でコンテナ不足が起こっていますし、
この説明の方が正確な事象を捉えた内容といえます。
しかし、一般消費者にとってわかりやすいかといえば、
巣ごもり消費を理由としたものよりは複雑です。
正確さと複雑さ
正確さを求めれば、どこかで複雑になってきます。
コンテナ船の例がその例です。
でも、理由によってその結果の捉え方が
異なって受け止められる気もします。
貿易における輸送価格の高騰という焦点よりも、
巣ごもり消費がアメリカで起きているという点に
目が行くような説明。
何かは伝わるけれども正確でない気がします。
だからといって、需給バランスの説明が
決してわかりやすいよとは言いづらいところです。
悩ましいバランスですが、
わかりやすさだけを求めるのは、
この報道では別の誤解を生みそうだと感じます。
わかりやすさと事実のバランスが大切だと
考えさせる件でした。