野球の大谷選手は、自分で英語を話していることが話題になっていました。 きちんと英語で バッター打席に立った際のピッチャーの情報について、次のバッターの方に、伝達していると言う話でした。 これはもちろん賞賛に値することなんでしょうが、専門分野の方の翻訳を務めた経験としては、当然の傾向だと感じます
専門分野を分かっている人の能力
専門家の方の通訳において、その専門領域の翻訳は、あまり必要でないことがあります。
例えば、機械分野の方の翻訳をした場合、 トルクのことを聞くことは、 よくあることです。その後、成果物の特定の点のトルクを聞くときに、 わざわざ通訳を挟む方が誤訳の可能性があります。 10カ所の点についてトルクが確認できたとして、 その平均を聞くのか、A点、C点、E点を聞くのかというのは、 言語が異なっても 専門知識としての常識が存在します。
この専門家としての常識部分について、わざわざ誰かを介入しなくても、きちんと専門家同士は理解できるものです。 だからこそ、最初の話の大谷選手は、次のバッターに元ピッチャーの情報伝達することについて、 必要な情報を過不足なく、きちんと伝えられることが可能なわけです。これはもちろんそこそこの英語力も必要でしょうが、どこの情報がバッティングにおいて重要なのかと言うことを自分でわかっているからこそできる技です。 そうでなければ、なんとなく全体の情報を並べ立てて、次の他者の方に伝達するだけになります。そうではなくて、右手の癖を見てこの球種が来ることを 伝えられれば、短く的確な情報伝達になります。 次の打者の人もそれで十分にわかる、つまりすごい英語を喋っていると言うことになるわけです。英語表現の良し悪しではなくて、その言葉に含まれる情報の価値が高いか低いかで、英語を話せるかどうかを判断しているはずです。
細かな情報整理
では、通訳としてプロの方の間に入るのは不要かというとそうではありません。場合によって、その理由を省略したり、なんとなくで表現している方というのがいるからです。
例えば、製造の成果物において、仕様上の合格範囲にその数値が収まっているとしても、安全率としてギリギリな場合があります。 周辺情報を伝えると、その安全率がギリギリではなくて、ギリギリアウトになっている場合というのが分かってしまうことがあります。 そんな時に、なんとなくで話している場合が経験上ありました。
プロ同士なので、 その目線で質問すればわかる気もしますが、もう一方の方が隠したいと言う姿勢で話す場合には、追求して聞く必要が出てきます。また、細かな情報を整理する必要もあります。こんな時には通訳が入ったほうが、きちんと情報を強調して引き出せることがあります。 よく、通訳は正確に表現するべきだ、地を薬であるべきだ、聞いていること以上のことを質問してはいけないと言う話もあります。もちろんそれは正しい判断ではあるでしょう。しかし、本当に価値が出るのは本人が何を伝えたいかということをきちんと把握した上で、表現以上の表現をして、相手から情報を引き出して情報整理することです。
どちらの立場に立つかや、どんな情報が発話者にとって 利益があるかということを正確に判断した上で、翻訳業務ということが存在します。むしろ、翻訳不確定性があると考えれば、 100%正確な翻訳はしないということができます。
記録文章
専門家の方の間に入るもう一つの有意義な点は、記録文章を正確に残すことができることです。
大谷選手の場合は異なるかもしれませんが、ビジネスの場合は記録文章が必要です。相手はどんな発言をしたか、どんな合意をしたか、 どんな行動をこれから取るべきかということについて、しっかりと記録しておく必要があります。 いくら専門の領域に対してであれ、正式な記録文章を正確に書くことはなかなかできません。
会話で物を見ながら話しているのであれば、かなり正確な気はします。 しかし、文章だけできちんと物事が伝わるようにしようと考えた場合に、通訳者や事務方のサポートがあった方が上手な内容に仕上がることが多いのは経験上わかっています。 もちろん、事務方においても、その専門分野への知識がある程度必要ということは言うまでもありませんが。
このように、専門分野の内容であっても、文章に起こすときには、第三者の英語能力というのは充分生きる上になります。
まとめとして
専門分野の方の英語通訳を経験をした上で、 どの分野で翻訳の助力が必要か、 逆にあまり意味をなさないかと言うのは力加減があります。大谷選手が褒められるのは、ご本人の 日ごろの行いが良いという理由もあるでしょう。 もし、専門分野の翻訳をする場合には、このさじ加減を意識しておくと、双方に喜んでもらえる結果を作ることができます。
私のところに来る、英語話者のクライアントにおいて喜ばれている分野や必要な分野を想像するときに、こういう考え方を使っています。 どの領域が喜ばれるか、参考にしてもらえると嬉しいです。
【編集後記】
今後の発信の方向性を見直しています。
【運動記録】
ストレッチ○
【子育て日記(息子6歳11ヶ月、息子3歳5ヶ月)】
子どもと一緒にサッカーをしました。体力が凄まじいので、まだ大丈夫ですが、将来的についていけるかちょっと心配です。私も鍛えなければ。