論文やらビジネスにおいても
脚注がよく出てきます。
脚注は何に使うのでしょうか。
改めて考えてみるために少しまとめてみました。
(以下の例示において、実際の本文とは異なり、脚注番号を*に改めております。)
1. 直接引用
脚注ですぐに思いつくのは直接引用でしょう。
別の本に載っているものをその言葉を使うために
脚注で引用元を示します。
2010年代半ばから盗用やひょう窃に
大学が厳しくなっています。
論文では必須の内容ですね。
実際のイメージはこちらです。
「純粋経済損害としての遺失利益を賠償範囲に含めるという製造物責任法の採った方針を妥当なものと評価すべき」とする*。
*新美育文「損害論」判タ862号81頁以下(1995年)。
抜粋元:遠藤謙太郎「「製造物責任」における事業場の損害(リコール関連費用を中心として)」判例タイムズNo.1472 15頁(2020)。
2. 概要資料の提示
歴史性など、本論に関係がないところを
補足する役割役割です。
同じ領域であっても専門分野少しずれただけで
背景の共有が格段に難しくなります。
議論の軸足をそろえるために背景となるような
情報が何に載っているかを示します。
例示はこんな感じでしょう。
本稿において彫物(規制を含む)の歴史についての記述は、山本芳美『イレズミの世界』(河出書房新社,2005)に依拠している。なお、表記は適宜現代文に改めてある。
抜粋元:小山剛「職業と資格ー彫師に医師免許は必要か」『憲法訴訟の実践と理論(判例時報2408号臨時増刊)』249頁,270頁(2019)。
一つの脚注に書籍や雑誌の内容を
何個も羅列する場合があります。
紙面の関係や筆者にとって基礎であるかどうか、
入門向けに書いているかどうかで分量が
変わってるように見受けます。
3. 資料の補足
後述の傍論と似ていますが、資料の補足を
していることがあります。
条文番号の時期であったり、実務での締め切りを
提示してみたり。
本論の展開としては不要であるけれども
述べておきたいことはあります。
学術でもビジネスでも、玄人の方になるほど
細やかに差異を表現したいと考えます。
そこまで玄人と言えないかもしれませんが、私も
脚注に補足を書くのが楽しい方です。
……総会資料の電子提供の開始時期は、総会会日の三週間前とされた(会社325条の3第1項)*。
*条文番号は令和元年改正後のものである。電子提供の開始時期は、より正確には総会会日の3週間前の日または総会の招集通知を発した日のいずれか早い方であるが、実際には、電子提供開始後に招集通知を(総会会日の2週間前までに)発する会社が多いと予想してされる。
抜粋元:松尾健一「株主総会関係資料の電子提供と株主総会プロセスにおける対話」ジュリスト1549号29頁,30頁(2020)。
4. 事件番号の提示
事件番号を脚注に落とすことがあります。
文字数の関係や、本文中に入れ込むと
流れが悪いなど、理由は様々でしょう。
以下の例などでも()でその内容を説明していますね。
本文中に入れるとそれだけで長くなってしまいますし。
最近では、同項各号に列挙された行為の無効の訴えに寄らずに、個別の権利関係の変動についてその効力を争うことを認める裁判例が現れている*。
*最判平成22年7月12日民集64巻5号1333頁(新設分割による労働契約の承継の手続に瑕疵がある場合に、当該承継の効力を地位確認訴訟において争うことを肯定)、東京高判平成22年10月27日金融・商事判例1355号42頁(新設分割による権利義務の承継を、阻害行為としt取り消すことを肯定。)
抜粋元:大杉謙一「令和元年会社法改正の意義8 株式交付制度」商事法務No.2236 4頁,11頁(2020)。
5. 主張の補強
主張を補強するために脚注を使う場合があります。
例示はしませんが、自分で見出した結論について
権威の方が少しだけ違った観点で研究したものが
あることを示して、論述の範ちゅうをちょっと
広げて提示してみます。
6. 傍論の補足
本文で略しているものについて脚注で
補足する場合に使います。
以下の例ではサイクルが3つあり、そのうち
一つについて主題として深めていきます。
残りの2つは主題としては要らないのですが、
述べないのも変ですから、脚注で示しています。
図表1にはサイクルが3つ存在している*。
*ほかの2つは,売上、売掛金、現金のサイクルと現金、建物、販管費のサイクルである。
抜粋元:椎葉淳=村上祐太郎「会計ビックデータ活用の最前線ー「仕訳」を使えばここまでできるー タイムリーな情報を可視化する」企業会計Vol.72 No.8 99頁,105頁(2020)。
7. 法令番号の提示
法令番号を示すために脚注を使います。
本文中に示すと文字数が限られてしまう、
紙面では冗長になってしまうなどの理由で
法令番号を外出しするのに脚注を
利用している場合があります。
対象者や自分の段階によるかもしれません。
専門雑誌では積極的に略されていることが多いです。
修士論文の場合、論述の基本技術を
丁寧に習得する関連からは本文中に
あってもいい気がします。
ただ、長くなったり条文番号が傍論である
場合などは、修士論文でも脚注に落としておくと
本文がスッキリします。
行政による情報の収集は統計資料など広く一般から情報を収集する「一般調査」*と個別の行政処分の前提として、事実の収集、分析を行う「個別調査」がある。
*統計法4条など
抜粋元:(菅内敏恭「調査手続の法的整備と残された課題」税法学581号 191頁(2020))。
8. 謝意
本文中に謝意を示せなかったことについて、
脚注で謝意を記載しているものもあります。
執筆は集中する時間の塊です。
ヒントをくれたり時間を作ってくれる
方々との共同作業となります。
恩師・家族・友人・学校関係者・
ヒントをくれた部署の方・資料提供者・
家の犬や猫など、お礼を言いたい方が
たくさんいますが、紙面がない場合は
脚注に落とすこともできます。
直近の例では、太田匡彦「新型コロナウィルス感染症にテストされる感染症法(上)」法律時報1154号85頁(2020)。
まとめとして
脚注の使い方を8つ示してみました。
これ以外にも使い方がありますが、
基本的なところは以上で押さえられたなかと。
伝わる文章を作成するヒントになればうれしいです。
【編集後記】
CoCo壱番屋のカレーで
低カロリーにするために、最近は
ご飯をカリフラワーにできるようです。
しっかりルーが染みて良い感じでした。
【運動記録】
ジョギング○ ストレッチ○ 筋トレ○ サプリ○
【子育て日記(3歳)】
一緒に近所の神社へ。
お賽銭を入れるのが面白かったようで、
私のも入れ込んでくれました。