中間発表では、人によって色々な指摘を受けます。
進捗度合いは一様でないにせよ、よく聞かれる点をまとめてみました。
これから中間発表に向けてまとめていく方、最終提出に向けてブラッシュアップしたい方の参考になればうれしいです。
タイトル関連
タイトルは、みんなが最初に見るところです。
そしてとても短いです。
短い中に必要な情報が入るように気を使います。
税法用語・法律用語を使っているか
タイトルには、税法用語を使っているでしょうか。
税法用語がひとつも入っていないと、税法論文には見えにくいです。
新しい概念であれば、税法用語がまったくないことも想定できますが、ひとつは入る方が自然です。
また、法律用語を使っているかも確認しましょう。
なんとなくつけると、学問的に定義がされていない概念をタイトルの単語に持ってきてしまうことがあります。
読んだ教授陣は、おおよそが税法や法律の専門家です。
それらの人たちがわかりやすいように、単語からしっかり選別しましょう。
中間発表の段階でよくされる指摘です。
タイトルがわかりやすいか
タイトルがわかりやすいかは、とても大切です。
疑問点がはっきりしているでしょうか。
読みやすいでしょうか。
読めても意味が取りにくいということは、疑問点の言語化が上手くいっていない可能性があります。
タイトルを読んだだけでその先に興味が湧くように、わかりやすいものにするよう、指摘がよく入ります。
興味をひくか
法律用語を使っていても、わかりやすくても、興味をひく内容かがとても大切です。
タイトルだけというよりも、根本的な疑問点の設定の問題かもしれません。
あるいは、疑問点について見方をちょっとだけ変えると興味をひくような論点に変更できるかもしれません。
「論じる必要あるの?」という教授陣の指摘もよく聞きます。
興味をひくタイトルを目指しましょう。
目次の構成
目次で全体の論理構成を判断する教員が多いです。
手間を省く方は、ここだけで全体の論理構成を確認してしまう場合もあります。
とても大切な部分です。
最低限の章立てがあるか
章立ては全体をわかりやすくするものです。
ある程度の発展性が必要です。
3章以上は通常あるでしょう。
2章立ての場合、論理が展開していないという指摘を受ける可能性があります。
2章になるということはあまりないかもしれませんが、「法令の解釈 → 判例研究」で2章とするようなものがその例です。
もう少し要素を分解して、論理構成をつくる方がわかりやすくなるでしょう。
前提条件が前半に来ているか
論理をつなげるために、後半で使う単語や法的概念が前半でしっかりと説明されているでしょうか。
後半になって急に新しい単語を説明するのは、イマイチ親切とはいえません。
文章の芸術性よりも概念の理解しやすさを重視して記載する位置を設定しましょう。
ストーリーがあるか
目次にストーリーがあるでしょうか。
単に単語を並べて終わっていませんでしょうか。
論理構成がキレイに示されていれば、全体にストーリー性が出てきます。
逆にうまくないと指摘を受ける場合には,単語の羅列になっている可能性があります。
論文は辞書でもなければ概説書でもありません。
向かっていく方向性を見直しましょう。
余分な説明が入っていないか
言っても言わなくてもいいなら、言わなくていいものです。
「しっかり調べました」
「大量に文献を読みました」
は、教育者としては教授陣はその努力を褒めてくれるかもしれません。
でも、論文のクオリティにプラスになるとして、評価をしてくれるわけではありません。
論理構成に必要な情報は、その情報がどんなに新鮮なものであっても浮いてしまいます。
各論点はいいけれども、論点が散っている場合も余計な説明に話が渡っている場合がありえます。
「はじめに」で気をつけること
売りのポイントが入っているか
「はじめに」を読んで、ちゃんと売りが伝わるかはとても大切です。
普段の文献収集で、みなさんが読み捨てている論文と一緒で、タイトルを読み、目次をさっと眺め、その後「はじめに」を読むはずです。
読んだ際に何も伝わってこなければ、おそらくその論文をみなさんは収集しないでしょう。
論文を読まれる立場であれば、この素読みに耐えられる内容にするべきです。
当然みなさんがしているでしょうが、はじめにが悪ければ、残りのページは一切読まれません。
問題意識があるか
「はじめに」にちゃんと問題意識があるでしょうか。
書けがいいのではなく、どこが問題なのかを正確に教授陣に伝える必要があります。
問題意識があいまいな場合、どこにその論文が向かっていくかわかりません。
その問題は、万人の問題ではなく、おそらくあなたの心からの問題です。
それをわかってもらうためにも、最初の段階で言語化しておく必要があります。
判例研究
判例は税法論文で必ず出てくるところです。
作成には最新の注意を払いましょう。
事案の概要が短いか
授業などで判例研究を行うときと比較して、論文の場合は事案の概要をとても端的にまとめます。
どこが問題点なのかを意識した上で、必要な要素だけを提示するようにします。
判例研究は大切なのですが、裏返せば、いかようにでも言えてしまうところです。
傍論に寄らないように、必要な情報を提示しましょう。
最新判例に当たっているか
論文の提出時点で最新の判例に当たる必要があります。
高裁の判決が出ていませんか?
最高裁でも結論が出ていませんか?
最新の結論でなければ、論じる理由が薄れる場合があります。
意図的に地裁や高裁の判決を使うことがあるとしても、上級審の結論だけは触れておくところです。
判例の数は十分にあるか
問題点に対して、判例の数は十分提示しているでしょうか。
判例がひとつでは、弱いです。
ただ、論点によっては判例がひとつしかない場合がありえます。
ひとつでも教授陣が認めてくれるのか、法律解釈をして、他に類似として参考にできる裁判がないか吟味しておきましょう。
明確な表現になっているか
文章全体の読みさすさにも注意がいります。
読みやすいか
5W1Hを意識しましょう。
誰が・何をしたのか、読んでわかるでしょうか。
文章が一意にとれるような内容を意識して書きます。
アカデミックの論文は特にうるさいです。
通常の文章であったり、一般向けの文章であればそうは書かないという書き方もあります。
この「アカデミック」寄りの部分も意識がほしいです。
用語の定義をしているか
なんとなく、全体を書いていませんでしょうか。
論じている単語、特に中心の概念を論じる場合に、ひとつひとつの単語をきちんと定義していますか?
「なんとなく」で進めると、読み手によって理解する内容にブレが出ます。
めんどくさいかもしれませんが、最初の論理構成や単語の定義はしっかり丁寧にしましょう。
必要な借用概念を明確にしてあるか
税法の定義について論じているかもしれませんが、税法の場合には、よく借用概念を使います。
では、民法や商法、労働法でその定義がひとつしかないかといえば、そうではありません。
他の法律においてもそれらの概念は揺れています。
その揺れについて必要であれば端的にまとめておくべきでしょう。
また、揺れについて議論が必要でないにしても「税法としてはXXと解釈できる」と割り切って定義付けをして、次の中心概念の議論に進むべきです。
法律改正についていっているか
民法と商法についてその改正時期をしっかりと示しているでしょうか。
民法は改正がありました。
民法は税法でもよくよく関係することが多いです。
商法の改正もあります。
議論が旧商法の話であれば旧商法と書いてもいいですが、最初に「平成17年1月改正商法」(以下「旧商法」という。)など、定義をしっかりとしておく必要があります。
参考文献にも注意しましょう。
民法において、旧民法を説明しているものを参照してしまっていないでしょうか。
確かに、民法改正語も変わらないところがあります。
でも、参考文献の発行年度が脚注で改正より古い年度であれば、本当にその情報に鮮度があって参照するべきか教授陣がすぐに判断しにくいです。
しっかりと、改正後の文献に当たります。
文献
原点に当たっているか
文献は孫引きしていないでしょうか。
しっかりと追っていけば、誰か特定の人がその論を強く主張し他の人がそれに従って論じていることに気が付きます。
コア部分をつくった方の文献をきちんと参照して、その概念を提供する文献として記載したいです。
分量
規定の分量に収まっているか
大学院によって変わりますが、分量も検討点です。
10万字弱の修士論文を書いてもいい大学院もありますが、4万字前後にするようにという大学院もあります。
教員の指示に従うところです。
こちらの記事もどうそ。
記述を圧縮できないか
修士論文が長ければいいわけではないというのが持論です。
法律を学んでいると、他の人も皆さんも「怠惰」を感じることはないでしょうか。
民法が、パンデクテン方式によって共通項を総論としてまとめているように、同じことを書かなかったりまとめたりして記述量を減らそうとする傾向を見て取れます。
普通にしていると分量が無駄に多くなってしまうので、そうならないように記述を圧縮するのです。
無駄に長いと、中間発表で教員に指摘されることがあります。
税法修士論文は分量が多いほどいい? 脚注数が多いほどいいか?
幅と深さ
分量が増えると、議論する内容の外延が広くなります。
そうすると、議論が浅くなる傾向があります。
体積が決まっている長方形の横の変が長くなればもう一方の辺(深さ)が短く(浅く)なりますよね。
こういった考え方があるので、変に分量を増やして議論の横展開をしすぎないように注意します。
制度の沿革は本論に関係なければ不要
論文は、百貨店を目指さないようにしましょう。
概論書でもありません。
専門店にするようにします。
そうすると、制度の沿革は、本質的な話に関係しなければ記載が不要といえます。
この点もよく指摘される事項です。
結論があるか
結論は中間発表時点でうまく書けていないでしょう。
仮置きしている状態でも、中間発表時点ではよくできているともいえます。
それでも、結論に対して指摘されることは多いです。
従来の課題がどこまで解かれているか
あなたの結論が出たことにより、従来の課題がどこまで解かれたでしょうか。
解かれたものがなければ、議論をする意味自体を失います。
結論において、従来の課題に対してできるアプローチがあれば記載をしておきましょう。
なにか新しいことが言えているか
議論をするということは、何か新しいことをいうことにつなげるのが目標です。
その論文を書ききって、中間発表で何か新しいことは言えているでしょうか。
新しいことを言うのは、はっきりいってとても難しいです。
だから、こそ中間発表の段階から、少しずつでもその姿を浮き彫りにしていく必要があります。
ほとんどの方が、結論がうまくないことを指摘されます。
落ち込むというよりも発展途上という認識につなげます。
裏から攻められないか
言える部分を明確にしましょう。
Aという基準があったとして、「これが機能しない」というのでは、意味のある論文になりにくいです。
裏から攻めます。
この場合、Aという基準は機能しないが、この論文によって「機能するのはaaaという場合」のように成立する範囲を明確化します。
使える結論になっていくでしょう。
「機能しない部分を示す」だけでなく、「機能する場合の具体的な範囲」を示します。
いわゆる射程の提示にもつながりますね。
脚注
引用をしっかり示しているか
議論の内容が自分の意見なのか他の人の意見なのかをしっかり分けましょう。
スタップ事件から盗用とひょう窃の判定はとても厳しいです。
他の人の意見を自分の意見として書いた場合、一発でレッドカードです。
その論文のすべてが否定されます。
そうならないように、誰かの意見であればその部分を明示します。
明示しているか、しっかり確認しましょう。
正式な形式で引用が記載されているか
教員が指定した方法によって参考文献が引用されているか確認しましょう。
日本語の場合はこちらに説明をしました。
法学分野での引用方法・再掲文献をWordで相互参照する脚注機能
海外の文献の場合は、Bluebookを参照します。
書いてあるのですが、かなり最初わかりにくいです。
時間に余裕を持って参照しましょう。
全体として新規性があるか
そもそものテーマ設定についても中間発表で指摘されることが多いです。
まだまだ方向性の微調整を続ける必要を感じるでしょう。
やりつくされていないか
テーマの内容がやりつくされていないかが指摘されます。
やりつくされているのであれば、今更そのテーマで取り組むことを否定されるかもしれません。
隣接した法令に穴がないかを検討して
内容を変更できるといいです。
みんなが言っていることと結論が同じではないか
やりつくされてはいなくても、他の人が議論して出した結論と同じことしか言えていないならわざわざあなたがその論文を書く意味がなくなります。
書かずにすでに存在する別の人の論文を読めばいいからです。
みんなと違う結論に達する、ひとつでも新しいことをいうことを意識する必要があります。
新しすぎて判例がなくないか
新しくて、議論するべき内容であったとしても判例がない場合には、取り組むには時期尚早と指摘されることがあります。
判例研究がない論文も存在するのですが、修士論文であなたの能力を示すことを考える上ではちょっと記述バランスが悪いです。
類似の判例を検討するか、テーマをちょっとずらすかして方向性を整えたいですね。
最終判断は担当教授と話そう
関わった教員にたくさんのことを指摘されるでしょうが、最終判断はあなたと担当教員です。
言われてもすべてを訂正する必要はありません。
訂正するべきか判断がつかない場合には担当教員に相談をしましょう。
確かに個別の論点としてはおかしくても、全体を修正したり、今後の加筆具合によっては修正をしなくてもいい論点はあります。
引き続きがんばろう
中間発表で指摘されがちな事項をまとめてみました。
最終提出の際にも参考になる部分が含まれています。
気になったところは、チェックリストとして自分の修正に活かしてください。
いずれにせよ、引き続きがんばっていきましょう。
結論を書いて、提出するまで気が休まりませんが、論文の執筆はそんなものです。
税法論文を修士論文で書いている方が、書き進める際の息抜きに読んでいただければうれしいです。
【編集後記】
とある面接。
ひとつひとつを丁寧にします。
【運動記録】
ストレッチ○ 筋トレ○
【子育て日記(4歳・0歳)】
言葉を覚える年齢なのか、よくしゃべるようになりました。
「どこから覚えたの?」と聞いてみると、ちゃんと誰が言っていたかを教えてくれます。
覚えた経路を推測するのも楽しいです。