租税条約を結ぶ理由、租税条約のモデルと解釈について考えていきます。
租税条約は国にとって得なのか損なのか
租税条約が結ばれていますが、なぜ結ばれているのでしょうか。
主要な目的は二つ挙げられます。
二重課税の回避
一つは二重課税の回避です。
二重課税を排除する措置の義務は、基本的に納税義務者の居住国にあります。
以前納税国の話が出ましたが、住所地でなければ税を徴収するための調査であったり指導出会ったりが(執行管轄権)を行使できません。
結果として、二重課税排除の義務が居住地側に出てくるのです。
二重課税を排除することによって国際的な投資や貿易を促進することができます。
情報交換や脱税を防ぐ
国外での執行管轄権がないということは、国外での納税者の情報や活動情報を得ることが難しいということです。
得られなければ、課税できず、申告のみによってしか情報がない状態。
この状態が正しいかどうかをチェックするすべがありません。
外国の政府の協力を促すことは、お互いの国にとっての利益となるのです。
租税条約の大まかな種類
租税条約には元になるモデルが二つあります。
OECDモデル
一つはOECDモデルの租税条約です。OECDはOrganisation for Economic Co-operation and Developmentで、経済協力開発機構のことです。
このモデル、正式名称はOECD Model Tax Convention on Income and on Capitalとなっており、「所得及び資本に対する二重課税回避のOECDモデル租税条約」です。
フランスパリに本拠地があり、現在の加盟国は35カ国です。OECDは1)経済成長、2)貿易自由化、3)途上国支援を目的としており、この目的のための租税条約の雛形となります。
国連モデル
国連も、United Nations Model Double Taxation Convention between Developed and Developing Countriesとして、「先進国と発展途上国間の国連モデル租税条約」(国連モデル租税条約)を作っております。
先進国と発展途上国間の租税条約という目線を持っており、OECDモデルよりも輸入国の資本確保という視点を持った作りとなっています。
モデルの強制力はない
どちらのモデルにおいても強制力ということはございません。あくまでモデルです。
というのも、租税は両国の利益を調整する役割がありなかなか合意に至りません。
ですからできる限りモデルと指針を示すことによって両国の利益調整ができるように指針としての役割があります。
国際連盟によるモデル租税条約の発展として、参考ページもあります。
租税条約は国内法より優先されるか
それでは、日本の国内法と租税条約の優先を考えてみます。
国内法と租税条約が矛盾を起こした場合にどちらが採用されるかを考えるためです。
日本における租税条約の優先
憲法第98条2項には、次のようにあります。
日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする。
国によって違う条約優先の考え方
よく引き合いにでる米国ですが、締結した租税条約は、連邦議会が制定法でTreaty Overrideという考え方があります。
基本的に租税条約は他の国内法より優先される性質があります。しかしながら、一番直近に定められたルールによって上書きされるというのがこのTreaty Overrideです。
租税条約の解釈
租税条約の内容はシンプルです。
唯一に解釈できるようにできているわけではなく、ものによっては複数に読み取れることもあります。
これは、国内の租税法の規定自体も簡素なことも多く、解釈であったり通達であったりで方向を統一していることからも理解できる点です。
日米租税条約3条2項には次の通りあります。
一方の締約国によるこの条約の適用に際しては、この条約において定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合又は両締約国の権限のある当局が第二十五条の規定に基づきこの条約の適用上の用語の意義について別に合意する場合を除くほか、この条約の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国 の法令において当該用語がその適用の時点で有する意義を有するものとする。当該一方の締約国において 適用される租税に関する法令における当該用語の意義は、当該一方の締約国の他の法令における当該用語 の意義に優先するものとする。
ちなみに日米租税条約本文はこちらから和文を読むことができます。
その他日本国はウィーン条約法条約を締結しております。
ウィーン条約法条約32条における解釈はこちらのように案内をしてくれております。
第三十二条(解釈の補足的な手段) 前条の規定の適用により得られた意味を確認するため又は次の場合における意味を決定するため、解釈の補足的な手段、特に条約の準備作業及び条約の締結の際の事情に依拠することができる。
(a) 前条の規定による解釈によつては意味があいまい又は不明確である場合
(b) 前条の規定による解釈により明らかに常識に反した又は不合理な結果がもたらされる場合
参考に載せていただいているページはこちらです。
まとめ
租税条約は二重課税の防止や執行管轄権の行使を目的として締結され、締結国両国にとっての利益があります。だからこそ締結がされております。
一から租税条約を作っていくことは難しいため、OECDモデル租税条約や国連モデル租税条約があります。
これらは強制力はありませんが、租税条約を作る際の参考内容となっております。
しかし、国内法と租税条約が矛盾することも出てきます。
この場合、租税条約を優先させる場合もあればTreaty Overrideで最新の法律を優先させる場合もあります。
また、解釈に割れる場合はその租税条約での規定か、ウィーン条約法条約での規定のように、日米租税条約のように「締結の際の用語の意義」による場合や、ウィーン条約法条約のように、「締結の際の事情に準拠する」とあります。
【編集後記】
就職活動が終了した外資系志望の学生のニュースが出ています。
よくよく考えれば、毎年出ております。
ニュースのようなそうでないような。これから活動をされる方は特に焦る内容と受け取る必要はありませんね。
【運動記録】
ジョギングO ストレッチO 筋トレO サプリO
【昨日のはじめて】
日米租税条約
ウィーン条約法条約
【昨日の子育日記】
遊び方が激しいくなってきました。一度したこととは違うことをしてみたいのでしょうか。
子ども遊ぶのが仕事といいますが、とても仕事熱心です。