イギリスのUberにおいて、タクシー運転手が
自営業者なのか否かについて、イギリスの最高裁判所が
判決を出しております。
判決の内容も各国の判決に影響を与えるものですが、
今回はその内容よりも、イギリスと日本の労働者の
法律概念の違いに着目をして、比較法の難しさを考えてみます。
判決ニュースにおける単語の違い
日本語版の見出しにおいて、
英最高裁、ウーバー運転手は「従業員」 最低賃金や有給休暇などの権利認める
となっております。
一方、英語版では
Uber drivers are workers not self-employed, Supreme Court rules
となっております。
英国の最高裁判所が認めたのは、
タクシーの運転手がUberのworkerであるということです。
が、記事の見出しを比較すると、
日本語版では、このworkerを従業員としております。
workerが従業員でいいのでしょうか。
従業員とemployeeとworker
日本の労働法であれば、
「雇用類似の働き方」という論点もあるにせよ
従業員かそれ以外かを二分法で分けることが自然です。
しかし、イギリスの区分においては、
employee、worker、self-employedの三分法です。
日本語に直す際には、「従業員(被雇用者)、労働者(就労者)、自営業者」辺りを
使うことが多いように感じます。
ただ、employeeに労働者をあてがう訳もみられます。
どの訳語を当てるかということよりも、
イギリスの三分法の区分に基づいたイギリスの最高裁の判断が
日本語に翻訳する過程であたかも二分法の判断を前提に
下しているように読めてしまうことが、大きな問題です。
「専門家しか読まない」と考えてそうしたのでしょうか。
BBCの翻訳をしている方が労働者区分の差異を知らない可能性が
低いと推測すると、日本の判断に影響を与えやすくするために
このような訳語の選択をした可能性も考えられます。
workerとemployeeの違いの大まかな理解は、その権利の範囲です。
例えば、有給休暇について、workerもemployeeも両方が
取得することができます。
出産休暇、育児休暇の点で比較すると
employeeに対しては与えられますが、
workerに対しては与えられません。
このように、workerの方が与えられる権利の範囲が狭いです。
しかし、ニュースの見出しに戻れば、
workerを従業員と訳しているので、
日本の人がこのニュースを読むとあたかも
イギリスの最高裁はUberのタクシー運転手が
従業員として扱われる(=有給休暇も取れる)などと
権利の範囲を広く誤読する可能性があります。
比較法学では、土台をそろえることが大切
海外の事例を読み解く上では、
比較する土台をそろえることが大切です。
法学論文を書く場合に
この点はかなり重視されます。
比較したから何かがわかるというスタンスではなく、
そもそも比較する対象として適正なものかという点です。
誤読・誤訳の良い事例として今回のニュースが読めますので、
気になる方は比べてみていただくと面白いです。
【編集後記】
22卒の新卒内定がちらほら出てきていますね。
21卒の分析において、WEBツールを使った活動では、
例年よりマッチング率が高めだという結果が出ているようです。
【運動記録】
ストレッチ○ 筋トレ○ サプリ○
【子育て日記(3歳・0歳)】
今日の寝かしつけはうまくいかずに
起きてきてしまいました。
次はうまくできるようにがんばります。。