在宅勤務の労働者・雇い主費用負担問題と所得課税

費用という観点からは、ゼロサムとしてどちらが負担するか考えられます。
その意味で、企業側と従業員側のどっちが得しているのでしょうか。

在宅勤務の費用負担をまとめた上で、租税(主に所得税)との問題を考えてみます。

もくじ

在宅勤務、労働者・雇い主のメリット・デメリット

在宅勤務の費用負担の観点で、労働者側、雇い主側の両方からメリット・デメリットを考えてみます。

 

労働者・雇い主、共通のメリット

コロナ禍がある前提であれば、共通のメリットは感染対策です。

雇い主側は、感染対策の責任を果たすことができます。
労働者側は、接触を減らすことができます。

共通のメリットでしょう。

 

労働者のメリット・デメリット

労働者側のメリットをあげつらってみます。
  1. 移動時間が減る
  2. 居住空間の延長として快適にできる
  3. ちょっとした用事ができる(受取りなど。在宅勤務が増え、床屋が流行ったとも聞く)
居住空間の延長で働けることがプラスになるということがメリットにつながっています。
一方で、デメリットを考えます。
  1. 一日中、家に缶詰になる
  2. 子どもがいる、狭いなど快適空間ではない
  3. 費用負担のあいまいさ
居住空間は居住空間として分けられないことがデメリットとなります。
例えば、都心などで寝るだけであると、家に缶詰になることが苦痛の場合もあります。

子どもや共同生活者がいる場合に、昼間の時間に家が混雑して、不快になる人の話もあります。

雇い主側へのメリット・デメリット

今度は、雇い主側のメリット・デメリットを考えます。

雇い主側のメリットとして、

  • オフィスを小さくできる
  • 今後の採用において有利な制度である

が挙げられるでしょう。

 

オフィスを小さくできるのは、フリーアドレスの延長という捉え方になりますね。

フリーアドレスは、10人いても5人分だけの席を用意すれば良いというスペース節約の経済的利益があります。
これが、在宅勤務が増えることで、10人のうち、3人程度まで減らせるとすれば、さらにコストメリットを受けられます。

一方で、デメリットを考えると、

  1. 情報ろうえいの可能性
  2. 指揮命令伝達がしにくい
  3. モチベーションを保ちにくい
このあたりでしょう。
実質的に効率が落ちるかどうかというよりも、コントロールの問題をデメリットととらえる企業が多いです。

目が届く範囲に労働者を置いていないと、管理ができない、あるいは働いていないと感じるのです。

労働者側からは、「目の届く範囲にいなくてもしごとはできる」と主張されるでしょう。
実質、目の届かないことも多いでしょうから。
ただ、総じて労働法が「時間的・空間的拘束」を雇用の判断基礎とすることが挙げられます。

所得税課税

費用負担が問題となりますが、租税法はこの費用(給与)をどう判断しているのでしょうか。
平等性の意識で 在宅勤務手当の給与課税・国税庁の費用分担検討もされています。

実費精算なら大丈夫

個別のものを購入したのであれば、そのまま経費負担として大丈夫でしょう。
例えば、プリンタのインク代を代わりに購入した場合、そのインク代のレシートをもって会社に費用請求をする、それは通常の経費精算で対応可能かと。

といっても、在宅勤務規定を用意しておくべきでしょう。

Aさんはインク代を請求してくるが、Bさんはしてこない。
Cさんはインク代を請求して認められたが、Bさんは請求してこない。

こういった差は、税法上の前に不平等になる可能性があるので、つぶしておくところです。

 

一定額なら給与所得

会社から購入してもらったもののすべてが会社のしごとに使われるのかは、不明です。

インク代も、自分のプリンタのインクだった場合に、本当にすべてがしごと用なのでしょうか。
感染予防で車で通勤した場合のガソリン代や、プライベートもしごともする家の電気代の負担あん分は不明です。

渡し切り一律の手当は、給与課税をしましょうというのが国税庁の方針です。

費用のあん分

ただ、分けられない経費を会社負担にできないことは、実務上不便です。

ですから、合理的なあん分方法により負担を分けることを国税庁も指針で認めています。

例えば、

ある費用 × (その従業員の1か月の在宅勤務日数 ÷ 該当月の日数

といった計算方法です。
これにより

  • 電気料金に係る業務使用分
  • 通信費の業務使用分
を計算します。

この方法は、正確ですし、これ以上の費用負担を認めると租税回避につながる可能性もあり認めにくいです。

でも、ぶっちゃけ計算がめんどくさいです。
「こんな方法もありますよね」と話に出ましたが、「実際に誰がやるのか?」ということをこの界隈の方に言われました。

簡便性を考えると給与所得に含めることになるのが楽そうです。

また、あまり監視勤務にしたくはないのですが、ソフトウェアやアプリで対応も可能なのかと。

平等バランスの難しさ

費用負担を考える上では、平等バランスの難しさがあります。
いくつかの平等の観点がある上で、2つの観点から考えてみましょう。

 

企業側の発言力の強さ

費用負担を決めるのは、労働者と雇い主の合意であるのでしょうが、実質は雇い主(企業側)の発言力が強いでしょう。

アンフェアな負担だったとしても、それを是正できるのは企業側です。
また、企業側が不利な形式にはしないでしょう。

フリーランスとのバランス

仮に、従業員の在宅勤務の費用負担を柔軟に認めたとして、その場合にはフリーランスとのバランスが気になるところです。
もちろん、フリーランスが行うものは請負であってその成果に対して対価を払うのなら、その他の費用が認められるところではないです。

でも、時間単価で支払いを受けているフリーランスもいます。
フリーランス(フリーランサー)は、クラウドワーカーなどとも呼ばれます。

コロナ禍で保障を受けるにもかかわらず、適切な社会保障の支払いを受けていない問題とも暗にかかわってきます。

バランスが良い制度を

感染対策の意味での在宅勤務はいつか収束するでしょう。
コロナ禍対応として常々忙しく、収束後の議論はまだ十分でないです。

それでも、今後を見越して少しずつ制度設計をしていくことが、企業の基礎能力を上げることにつながります。
その下地になれば、うれしいところです。

 

【編集後記】
wordpressを作った会社への問い合わせ。
海外なので、営業をしていました。

【運動記録】
ストレッチ○ 筋トレ○ サプリ○

【子育て日記(3歳・0歳)】
密にならないところへ虫取りに。
トカゲを見つけましたが、逃げられました。

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